祖母から譲り受けた墨
印鑑の仕上げの直前に使用する墨、この墨は印鑑の修行を初めて間もない頃に祖母から譲ってもらったものです。今では写真の頃よりもずいぶんと短くなりましたが、硯とこすれ合う感触は今でも心が落ち着く瞬間です。印鑑を彫刻するにあたって、自分の精神状態が落ち着いているということが絶対条件であります。心が整っていないときに印鑑を彫ると不思議なくらいに真っすぐ彫れなかったりするんです。なので、僕は印鑑彫刻の前に必ず行う「硯と墨と水をすりあわせる」という時間をとても大切にしています。
印鑑彫刻のための刀
この小刀は、僕が印鑑職人を生きる上で一番重要な役割を果たすこだわりの道具です。苦労して作り上げた小刀なだけに、かなりの愛着を持っています。1本1本微妙に刃先のサイズが違っていて、印鑑のサイズや文字の感覚に応じて使い分けています。一番左の小刀が印鑑の仕上げ用の刀です。この1本だけは他のものと研ぎ方が異なります。
めんどくさいことこそ
僕の自分との約束というノートの中のひとつに、「めんどくさいことこそ率先してやれ」という約束があります。科学が進歩した現代社会において、わざわざ墨をすって手彫りで印鑑が彫刻できるように修行すること。これこそが一番のめんどくさいことかもしれません(笑)。だけど、誰もしないことだからこそあえて泥臭くやってみたい。これも、120年続く老舗を受け継ぐにあたっての覚悟のひとつかもしれません。
こだわりの発信
最後に、みなさんはどんなこだわりをもっていますか?生き方、考え方、道具などなど・・・僕はこれからの人生で、こだわりを持った人たちと出会って語り合っていきたいというひそかな夢を持っています。そのためにこれからも僕のこだわりを発信し続けます。