試験当日の大失敗
印鑑彫刻の国家試験試験当日。その日まで練習に練習を積み重ね、持てる力を発揮できたらなんとか合格できるだろう、という感じで挑んだ試験当日、あろうことか5時間くらいある試験の2時間以上が経過したところで、取り返しがつかないくらいの大失敗をしていたことに気がつきました。ほんの些細なミス、だけど、その小さなミスは国家試験としては取り返しのつかないくらいの大問題。
「この日のために何年間も練習してきたのに!なんでよりによってこんな大事な日に・・・。いっそ気がつかなければよかった。もういいや、諦めて帰ろうかな。」
そんなマイナス思考な言葉が頭の中で何度も何度も鳴り響きました。だけどその時に試験会場で出会ったある職人さんの言葉が脳裏をよぎりました。
「この試験受かったら、一緒に1級を目指そう」
その一言、たったそれだけがどん底の気分に浸っていた僕を突き動かしました。「無理かもしれない」という全てのマイナス要素を頭から遠ざけ、「僕ならできる」という気持ちだけをひたすら自分に言い聞かせました。
今までの自分のやり方では確実に時間に間に合わすことすらできない。やり方もすべてを変更して、ただただひたすらに印鑑を彫り続けました。もちろん、時間終了5分前になってもまだ完成しておらず、焦りだけが襲ってきました。それでもなんとかかんとかカタチにして審査員の方に提出。
自分の常識は超えられる
「最後までやりきった!!!」そのときに感じた気持ちはこうでした。もう合格とか不合格とか、正直どうでも良いって思えるくらい(笑)。わけのわからない充実感と達成感。今思えば、あの時の僕が手にしたものは、「いつも通りやったうえでの合格へ安心感」よりも何倍も価値のある、「自分の常識を超えた瞬間」だったのでしょうね。
プラス思考の方程式
この経験をきっかけに、僕は僕自身を超えていくことに興味が目覚めました(笑)。「昨日までできなかったことにチャレンジして超えていく楽しさ」、誰かの言う「そんなことやってもうまくいかないよ」という常識を超えて手にしたものの愛おしさにも似た喜びの感情と感動。
いつの間にか、
挑戦⇒失敗⇒諦め⇒落ち込む⇒励まされる。
のマイナス思考の方程式から、
挑戦⇒失敗⇒悔しい⇒もう一度挑戦⇒超える
というプラスの方程式にかわっていました。
<この経験から得た学び>
人の失敗談や本から知識を学ぶことはものすごく参考になります。でも、自分自信が挑戦して失敗して、それを乗り越えて学んだ経験は、それらとは比べ物にならないくらいおっきいことだと、僕は感じています。
そして、人は窮地に追いやられ、「もう諦めようか」という言葉が脳裏をよぎり、しかしそれでも挑戦することを選択した時、いつも通りならば思いつかないような新しいアイデアが生れてくるものだということも学びました。
<これからについて>
これからも職人を生きる上で、人生を生きる上で、数多くの挑戦をすることになると思います。その数だけの失敗がついてまわることは承知の上で、自分の中の弱虫と戦いながら、ひとつひとつ階段をのぼっていけたらな、と思っています。こんな僕ではありますが、ひとりでも多くの共に戦える仲間と出会えることを願って、今日のブログとさせて頂きます。最後までありがとうございました。