それは確か2011年の秋頃、真っ赤に紅葉したもみじのじゅうたんが一番奇麗な季節で、僕が彫刻士を目指すと決めて、地元に一時帰宅したときの話です。
真っ先に連れて行ってくれたのは、祖父が愛してやまない花筐公園の山道でした。
そこでの祖父は、決して多くを語りはしませんでしたが、
その祖父の無口な背中は、誰よりもかっこ良かったことだけは今でもはっきりと覚えています。
それから数ヶ月が過ぎ、祖父と祖母の3人で食事に行く機会がありました。
大好きなお酒を飲んで一気におしゃべりになった祖父は、
自分が印鑑の修行していた大阪での生活のこと、
祖父にとっては大切な息子で、僕にとっては尊敬する父のこと、
職人とは何かということから愛とは何か、ということまで実に多くの人生哲学を語ってくれました。
その中でも特に印象に残った言葉が、
「としが帰ってきてくれて嬉しいわ。」 という、その一言でした。
僕が家を継ぐと決めたことを誰よりも喜んでくれた祖父の笑顔を僕は一生忘れません。
そんなおじいちゃんとおばあちゃんとは、昨日も近所の温泉にいってきました。
これからも元気で。