こんにちは。小林大伸堂5代目彫刻士の小林稔明です。
職人を生きていて、たまに訪れるモンスターがいます。
そいつは何の前触れもなく訪れ、長いと数ヶ月滞在することもあります。
いわゆる「スランプ」ってやつです。
そいつが今日、久々に訪れました。
原因はおそらく、「焦りからくる心のみだれ」です。
今朝の僕は、少し先の予定のことを考えながら印鑑を
彫刻していました。これがマズかったんだと思います。
100%彫刻作業に集中できていなかったんです。
その隙をモンスターに狙われてしまいました。
心の乱れはわかりやすく体に伝わり、彫刻刀に現れます。
これはもうお決まりのようなものですが、
彫刻刀の歯先が折れてしまいます。
戒めのためにと思って写真をとっておきました。
予備で使っている2本目の仕上げ刀の刃先もやってしまいました。
ここまでくるとさすがに印鑑を彫刻することが困難になります。
砥石を使って少しずつ刃先を整えていきます。
何度も何度も整えていきます。
このときに大事なのが、心の中に潜むモンスターに打ち勝つことです。
心の乱れを整え、目の前のことだけに集中し、自分自身と向き合うことです。
必ず見えます。なぜ今僕はこの作業をしているのか、
この作業をすることで僕は一体何がしたいのか。
そのことを再確認すると、嘘のように心が落ち着きます。
心が落ち着くと手元が安定し、刃先を研ぐことができます。
心の乱れを整えること。それが僕の職人としての生き方だと思っています。
印鑑を彫刻すること、それは心を整えること、
つまり、僕にとって「印鑑を彫刻することは自分の心を整えるための修業」
でもあると思います。
そして、これまでも、これからも、
僕が生きるうえでベースになってくる作業、
それが印鑑を彫刻することです。